コラムコラム

自由と成長の両立

2020.09.17

今回のコロナウイルスもそうですが、人は人生において価値観を大きく揺るがす出来事に何度が遭遇します。価値観の変化を強いられた時に、どんな風に物事をとらえ、行動をするかで、その後の人生は大きく変わることがあります。

 

私自身も今までに自分の価値観を大きく変えた出来事が3つありますが、今日はそのうちの一つをお話しします。それは、外資系コンサルの会社で最後のプロジェクトになったドイツでの仕事と生活です。

 

少しの不便が創造性を生む

皆さんは、ドイツというとどんなイメージを持つでしょうか?

 

勤勉、堅実、真面目とかでしょうか?歴史や文化を見ると日本人と共通するものもありますね。タイタニック号に関する小話で、皆が救命ボートに乗り移ろうと大騒ぎしている時、アメリカ人には「船に残ればヒーローになれます」と言い、ドイツ人には「船に残るのがルールです」と言ったら従ったというジョークがあるほどです。

 

BMW、ベンツなどの車は頑丈で高性能という感覚がありますね。ビール生産量&消費量は世界3位で、とにかくたくさん飲みます。ミネラルウォーターよりも安いくらいです。そして何と言っても、サッカー!もうサッカーを中心に生活が回っている感じです。私も小野選手(ボーフム)と長谷部選手(ヴォルフスブルク)の試合を観に行きましたが、街とスタジアムの雰囲気はそれは素晴らしいものでした。

 

そんなドイツですが、暮らしてみて感じたのは、生活が非常にシンプルだということです。

 

あちらでの週末の過ごし方ですが、家族や友人と公園や川辺でお酒を飲んだり、本を読んでのんびりしたり、カフェやバーで話し込んだりする人をたくさん見ました。 日曜日は、デパート以外のお店はほとんどやっていません。一昔前は土曜日もやっていないお店が多かったそうです。スーパーに行けばマイバッグを持っている人がほとんどでした。パン屋でケーキを買ったら、包装がとても質素で中身の商品が壊れそうでした。日本のようにパンを一つ一つビニール袋に入れるなんてことはしません。

 

地下鉄の照明も必要最低限の明るさでしたし、その他の公共施設も日本のそれと比べるとかなり、暗かったです。電車も時間通り来ないことが度々ありました。私が住んでいたアパートは築100年近くでした。内装や水回りは新しくしていましたが、建物はそのままです。シャワーの水の出が悪かったり、エレベーターが使えなかったりすることも度々ありました。

 

そんなドイツの人たちは、モノをとても大事に使います。街の景観も古いものが多く残っていて、とても素敵でした。またリサイクルの考えと仕組みが社会に浸透していました。

 

多くの人が自転車通勤をします。自転車は、頑丈で少し高価なので、みんな自分でメンテナンスして何年も使います。数千円で買えるからと放置しておくようなことはしません。使えなくなればすぐに買換えるのではなく、一手間かけて新しい価値を創造するというDIY精神が脈々と流れていると感じました。

 

私がドイツに住んでいたのは約10年前ですが、もうすでに環境先進国だったように思います。SDGsなんて言葉も必要ありませんでした。文化としてしっかりと根付いていたのです。

こんな風に「少しだけ不便な生活を許容するライフスタイル」が私の人生観をガラッと変えました。

 

 

ドイツに理想の働き方があった

ライフスタイル以外で、日本とドイツの違いを意識したのは、働き方についてです。

彼らは金曜日になると15時くらいには、週末に家族でキャンプへ行くからとか、恋人と旅行に行くからといってそそくさと帰っていくことが結構ありました。

ドイツは、「契約」と「権利」の社会です。

 

有給休暇も2週間~3週間まとまってとるのが当たり前です。祝日と合わせると8週間くらい休みます。また、労働時間も日本と比べるととても短いです。管理職以外は1日に10時間以上働いてはいけないと、法律で厳しく規定されています。契約で決められたことはきっちりやるが、それ以外はやらない、というのが雇用する側も雇用される側にも共通認識としてあるんです。

 

一方、日本はどうでしょう?働き方改革やテレワークのかけ声は素晴らしいですが、実態が伴っているでしょうか?国民はより幸せを感じているのでしょうか?私ら日本人はドイツにいた時も、平日週末関係なく、夜遅くまで働いていましたし、クライアント企業も日本人役員は休み返上で働いていました。そんな状況を顧みて、ドイツ人のような働き方をするにはどうしたらいいのだとうかと、真剣に考えるようになりました。

 

これからもコンサルとしてピラミッド社会の生き残り競争で戦うことは考えませんでした。部署のボスから他社へ移るので一緒に来ないかと誘われましたが、組織の論理に縛られる人生から抜け出したかったのです。

「少し不便でも今あるモノ活かし、コミュニケーションを大切にするライフスタイル」

「組織に縛られる働き方ではなく、自分次第で柔軟に変化・成長できる働き方」

そして、「自由と成長を両立させること」が私の求める理想的な働き方だということに辿り着いたのです。

 

自由には責任が、成長には制約がつきものですが、私はサラリーマンというキャリアを捨て、新しい働き方・生き方を模索することを決めました。

 

それから10年が経ちました。

ドイツ流の働き方ができているのかと言えばまだまだ足りない点もありますが、時間・お金・行動の自由度がサラリーマン時代より格段に高まったので、及第点レベルと言えるでしょう。

 

これからは私たちの働き方はますます多様化していきます。仕事も分散と集約が繰り返されるでしょう。働く目的は人それぞれだと思いますが、どんな働き方をするかは、あなたが決めてよいのです。誰かに任せる必要はありません。誰かに任せてはいけません。

奥富 宏幸
\この記事を書いた人/ リーダーシップ&キャリアデザイナー

奥富 宏幸 - Hiroyuki Okutomi -