コラム
2020.09.21
小説家の山本周五郎は、劇作家ストリンドベリの一節から、
「苦しみつつ、なおはたらけ、 安住を求めるな、この世は巡礼である。」
を座右の銘としていたそうです。
この言葉は、数年前に私の父が机の引き出しに、メモ書きで忍ばせていたのをたまたま見つけました。
メモを見つけた時は、
「苦しみながら働くなんてつまらない。」
「自分ばかり辛い思いをするのは御免だ。」
そんなことを考えもしました。
しかし、現在は「苦しみ」に対する見方が変わりました。
組織であろうと個人であろうと、働くことは絶望です。絶望しかありません。
時には、上司や会社の意向で昨日は白だったことが、今日になったら黒に覆されることもしばしば。異動や転勤、無茶苦茶な営業ノルマ、突然の取引停止・・・周りの顔色を伺いながらの残業やただハンコを押すためだけの報告書作成・・・
自分の思うとおりに行くことなどほとんどありません。
そう、仕事には苦しみしかない。
でもその苦しみとは、思い通りにならないことを嘆くためにあるのではなく、自分のやるべきことが見えた時に過去の自己を超えていくためにあるのです。
自分が語る言葉の限界を超える度に、新しい世界が開ける。そこにかすかな希望が見えてきます。仕事とは、人生をかけて社会と自己を統合させる一大プロジェクト。
自分の好きなことやできることの範囲で、「自分探し」や「ワクワクしたい」と言っている人には無縁の境地と言えるのではないでしょうか?
皆さんは、「苦しみ」をどんな風に考えますか?