コラムコラム

「成長」の輪郭

2020.09.03

8月17日に内閣府が、2020年4-6月期の実質国内総生産(GDP)速報値を発表しました。前期比年率で27.8%減と戦後最悪の落ち込みでした。

 

国の成長を見る代表的な指標としてGDPが使われていますが、今日は「成長」について考えてみたいと思います。あなたは、「成長」についてどんな考えをお持ちでしょうか?

 

まずは、偉人の成長に関する名言を引いてみましょう。

 

変わることがなければ成長することもない。成長することがなければ真に生きていない。(ビル・ゲイツ)

 

自ら精神的に成長し、人々の成長にも協力せよ。それが人生を生きることである。(トルストイ)

 

人生には進歩と退歩の二つしかない。現状維持とはつまり退歩している証なのだ。(ニーチェ)

 

成果が出ないときこそ、不安がらずに、恐れずに、迷わずに一歩一歩進めるかどうかが、成長の分岐点であると考えています。(羽生善治)

 

人に変わってほしいのならば、まず自分が変わりなさい。(マハトマ・ガンジー)

 

小さなことを重ねることが、とんでもないところに行く唯一つの道。(イチロー)

 

人生において「成功」は約束されていない。しかし、人生において「成長」は約束されている。(田坂広志)

 

では、成長するための最善の方法とは何でしょうか?

 

ビジネスにおいてもそうですが、こういう問いについては、すぐに答えを探そうとしてはいけません。論理立てて分析的に考えることが大切です。

 

まずは、「成長とは何か」と、言葉の定義を考えてみましょう。あなたの「成長」という言葉に張り付いた思考を眺めてみるのです。

 

次に、「何のために成長するのか」、その目的を考えます。

 

そして、最後に、「成長するための最善の方法とは何か?」を言語化してみましょう。どんな手段があるのかを考えてみるのです。

 

そうすることで、「成長」という言葉の輪郭が少しずつ露わになるはずです。思考を深めれば深めるほど、言葉が言っていないことが見えてくるでしょう。

 

与えられた問いに対して、どんな道筋で思考するかによって、出来上がる答えの奥行きが決まるということですね。ここで、私の考えの一つを共有させていただきます。

 

成長とは何でしょうか?

 

成長とは、概念を創造する実験のようなものです。

 

成長には二段階あると思います。私(個)の成長とあなた(組織や社会も含む)の成長です。どちらの成長も、双方の存在がないと成立しません。無人島で一人で生きている人間が成長を感じることはないでしょうし、会社の成長だけということもありません。構造・制約・対象があって、私もあなたも成長できるのです。

 

常に移りゆくビジネスの世界では、無数の概念が生まれては消えていきます。自分が見たい世界と自分が見せたい世界を概念化し、具体化する過程で成長を感じ取れるのだと思います。

 

別の見方をすれば、成長とは、空に彫刻を彫るようなものとも言えます。

 

雲は刻々と形を変えますし、そもそも空に彫刻を彫るなんてできないと思うでしょう。それでも何か新しい発想で空に彫刻を彫ることができるはずです。空を見上げない人には作品は見えないでしょうし、その作品も時が経てば消えていきます。成長は、人が気づかないところで生まれるものでもあります。

 

 

それでは、何のために人は成長するのでしょうか?

 

それは、常識を無効化するためです。このことについては、以前のコラムでも書きました。

 

新しい概念が生まれれば、人は、都合良く物事を解釈し、支配したり抑圧したりする動きも出てきます。そうして、偏った考え方に収斂されていったものを「常識」と呼びます。常識が蔓延すれば、組織も社会も硬直化し、生きづらくなります。歴代最長の安部政権を見てみると、そのことがよく分かるのではないでしょうか?

 

新しい概念を創造するためには、過去の自分の考え方を乗り越え、未来の誰かの役立つ行動が必要になります。そのためには、世界における自分の役割を認識しなけれればいけません。

 

自分も他者も引き上げるような新たな価値交換を生み出す活動をすることで、世の中が複雑になり、曖昧になります。その曖昧さが矛盾する価値観となり、その価値観と向き合う葛藤の中から何かを生み出す中で成長というものが生まれるのではないでしょうか?

 

では、成長するための最善の方法は何でしょうか?

私はこんな風に考えています。

 

1. 成長する善い問いを立てる。
2. 成長する善い仲間をつくる。
3. 成長する善い場をつくる。
4. 定期的に1~3のプロセスをリセットする。

 

詳しい説明は省きますが、これらを考えて言語化するのも結構時間がかかります。
その代わり、自分の頭で考えたことなので、ずっと残りますし、他のアイデアとの応用も利きやすいです。弊社が行うコンサルティングでは、このような言語化の訓練も行っています

 

コロナ禍での各国の首相やリーダーの発言を見ると、とても面白いです。自分で考えた言葉か、誰かに考えてもらった言葉かがよく分かります。

 

社員やお客様に自分の言葉で伝えることがリーダーマインドを持つあなたの重要な仕事です。
このコロナ禍で、あなたの考えを言語化して、ストックしておくことは、数年後の会社の成長にも大きく影響するでしょう。ぜひトライしてみてください。

奥富 宏幸
\この記事を書いた人/ リーダーシップ&キャリアデザイナー

奥富 宏幸 - Hiroyuki Okutomi -