コラムコラム

「流行」を追うか?「時流」を追うか?

2020.09.10

「強い」と「上手い」

「強い」と「上手い」の境目は曖昧です。

 

普段、私たちは仕事をしていて、

 

「おまえは仕事が強いなぁ」とか、
「この前のプロジェクトは上手かったな」

 

ということは言いません。仕事では勝ち負けが分かりにくいですし、人間の代わりに動いてくれる機械やシステムが人の成長を実感させにくくさせている側面もあるからです。

 

noteフェス「上手くなる方法と、強くなる方法(石川 善樹 × 森内 俊之)」が面白かったです。予防医学研究者の石川さんと将棋棋士の森内さんという異色の組み合わせですが、「クリエイティブ」という視点から見ると非常に共通点がありました。こちらから見逃し配信を観ることができます。

 

森内さんによると、将棋の戦法にも流行りがあるそうです。流行りの戦法で勝ち続ける棋士がいれば、その戦法を使う人も増えますし、その戦法を使わせないような戦法を考える人も増えます。羽生九段や藤井聡太二冠の超一流棋士は流行の戦法を研究しつつ、オールラウンドの戦いもできますが、流行の戦法ばかり研究すれば、自分の型が崩れることもあります。どの戦法を研究するのか、時間も限られています。

 

いったんは廃れた古い戦法が数年後に見直されて蘇ることもあるという話を聞くと、「流行」の底流にある「本流」を見る目を持たないといけないと思います。

 

 

「流行」ではなく「時流」

このコロナ禍で今までのビジネスモデルが全く通用しなくなり、新しい取組みを始めている会社がたくさんあります。営業や販売、会議まで、オフラインがダメだから、オンラインに切り替えるという流れです。いつの時代も「流行」というものがあり、ビジネスをする上でその「流行」に乗るか、乗らないかを考えるのではないでしょうか?

 

「流行」はテレビ局や電通をはじめとしたメディアがつくるのものがあれば、タピオカミルクティーのように女子高生の間で生まれるようなものもあります。「流行」は商品やファッションに限らず、思想や信仰にも及びます。流行をつくる側と、流行を追う側、あなたはどんな風に考えるでしょうか?

 

一方で、「時流」とは、時代の思潮です。時流を追いかけるには、10年、ビジネスによっては100年単位の時間が必要です。歴史の流れの中で自分のビジネスがどんな意義を持っているのかを俯瞰する。その上で、これからのビジネスをつくっていく思考と行動が、時流に乗るということだと考えます。

 

どんな分野においても、10年単位で何かを追究している方の話というのは示唆に富んでいて、自然と信頼感も高まるものです。流行ではなく、時流を追いかける人でありたいと思います。広告やネットの情報を鵜呑みにしてしまう情報弱者を食い物にするビジネスが横行している今、あなたは「流行」を追いますか?それとも、「時流」を追いますか?

 

 

流行は「世界の車窓から」で見る景色

先日お会いした美容サロンの経営者もそんな方です。近々関西に引っ越しをするというので今までお世話になったお礼をしに伺いました。その方とは年も仕事も全く違いますが、仕事の哲学というか、物事の考え方にとても尊敬できる部分があり、かれこれ10年以上お付き合いさせて頂きました。

 

美容業界と言うと派手で華やかなイメージを持っているでしょうか?経営者自身もファッションや容姿にこだわったり、時には高額商品を売りつけたりといったイメージを持っているでしょうか?その方にはそのイメージが全く当てはまりません。

 

例えば、シャンプーの商品数は1万点以上あります。毎年のように新しい商品が生まれは消えていますが、消費者を飽きさせないために、あの手この手で新商品を売り込みます。

 

「ハリやコシ」、「艶」、「まとまり」、「地肌」、「頭皮」と消費者の悩みになりそうなものをニーズとしてねつ造する(悪い意味ではなく)。新たな不安や楽しみをつくり、煽る手法は、まさに「流行」ビジネスの王道と言えなくもないです。

 

ただ一方で、そんなことをしなくても地に足をつけて地道にビジネスを続けている人もいます。先日お会いした知人もまさにそのタイプで、業界の裏事情に精通しているからこそ、「お客にとっては不幸なことだ」とおっしゃっていました。

 

例えば、育毛剤なんかはその最たる例です。必ず結果がでるような宣伝文句の商品が無数に出てきても、数年経てばいつの間にか市場から消えている商品ばかりです。唯一残っている■アップなどの商品もなぜ売れているかと言えば、一つには多額の広告費をかけて継続して販売できる経営資源があるからです。成果を実感できないリピート顧客が離反しても、新たに顧客を獲得して、売上を維持しているわけです。

 

大企業は金に物を言わせ、商品情報の露出を増やします。ネットに流れる情報には、アフィリエイターが書いたものややらせレビューも数多いのが実情。検索しても企業にとって都合のよい情報しか出ないようになっているのも、「大人の事情」があるのです。

 

その知人も正しい情報の量と質では大企業にも負けないくらいのものを発信していますが、検索結果で上位に来ることはないと嘆いていました。それでも自分の信念を貫いたビジネスをしているからこそ、いろいろな商品を使ってもだめだったので、駆け込み寺のような存在として長く事業を続けているのだと思います。

 

私たちはついつい花や木に目を奪われがちですが、雨が降らなかったり風が吹けば倒れることもあるでしょう。でも、地下に根をしっかりと張っていれば、また草木は生えてきます。

世間が流行で騒いでいるときにこそ、時流を見て、流行後に備える。世間が騒いでいる時こそ他社に差をつけるチャンスなのです。

 

電車に乗って車窓から外の景色を見ることをイメージしてみてください。流行とは、「世界の車窓から」で見る景色のようなものではないでしょうか?そのくらいのマインドセットとスピード感を持ちたいものです。

奥富 宏幸
\この記事を書いた人/ リーダーシップ&キャリアデザイナー

奥富 宏幸 - Hiroyuki Okutomi -