コラムコラム

会社を辞める原因は社長にある

2020.08.20

先日、仕事関係の知人から約20年間勤めた会社を退職して、転職するという報告がありました。

 

彼は40代半ば、二人の子どもがまだ成人していない中での大きな決断でした。40代半ばというのは、キャリアにおいて大きな節目となる時期です。経験やスキルを身につけてきた一方、新しい環境や挑戦への耐性が弱くなるのがちょうどこの頃からだと思います。

 

それなりの肩書きや専門性を身につけている人も多い一方で、「60代まで今の延長線上の仕事で人生を歩むことを本当に望んでいるのだろうか?」そんな疑問を持つのだと思います。

 

退職と言えば、人はどんな時に働く意欲がそがれ、会社を辞めようと思うのでしょうか?

結論から言えば、絶望感と不誠実を感じた時です。

  • 給与が増えない。
  • ブラックな職場環境。
  • 話を聞いてくれる相手がいない。
  • 上司の評価が公正でない。
  • 会社にチャレンジ精神がない。
  • 経営者に付いていきたいと思わない。

など様々な原因があるでしょう。

 

周囲は会社への愚痴や不満ばかりでやる気がなかったり、言われた仕事しかしないような環境ですと、仕事に対する価値も見出せなくなるでしょう。現状を変えたいという声を聞く相手と、現状を変えていく仕組みがないと、「改善を提案しても変わるわけない」とあきらめていく社員もいます。改善提案制度やサンキューカードなどの仕組みだけを入れても、それが社長の掛け声だけでは全く意味がないのです。

 

そこは、経営者の本気度が試されます。結局は、経営者のリーダーシップに尽きます。

 

「社会の課題を解決したい。」「新しいライフスタイルをつくっていきたい。」という強く大きな志と行動力がないと、社長の気分次第で方針がコロコロ変わり、会社にチャレンジ精神が育ちません。

 

もっと言えば、社長が自分の言葉で語りつづけなければいけないですし、世の中の見方を変える思考も持ち合わせていないといけません。そして、社長の欲求の対象が自分自身、社員、顧客など「人」である間は、業界の横並び構造からは抜け出すことはできないのです。

 

組織の成長には、危機感と安心感が必要です。

ぬるま湯体質の組織は、現状維持するで満足してしまいます。社員は動機がないと敢えて難しいこと、厳しいことにチャレンジしないので、時々組織を意識的に揺さぶり、危機感を醸成することもリーダーには必要なことです。

 

同時に、社員が自分の仕事と居場所を与えられ、給与や社会保険の保証をもらうことで、安心を感じてもらうことも大切です。 このコロナ禍では、特にその安心感が重要になるでしょう。縁あって共に働く社員を互いに支え合うことが、適度な緊張感と温かい空気感を作ります。つまり、社員間の信頼関係をベースにした「心理的安全性」が良い仕事につながります。

 

また現実的な問題としては、給与が増えないこともモチベーション低下の原因となります。いくら経営者の人柄がすばらしく、仕事にやりがいを感じていたとしても、利益が出ないビジネスであれば、社員は生活や自己実現のために転職を考えるかもしれません。利益は会社が社会に必要とされているかを見るための通信簿であり、給与が増えることは社員も社会に役立つ意義を感じる一つの指標となります。

 

仕事を通して実現する価値と人生を通して実現する価値が全く重ならないと、仕事を単なる義務や趣味を充実させるためのお金稼ぎと思うかもしれません。残業が多く、休日も少ないなどの過酷な勤務状況だけでなく、取引先にマージンを払って根回しをしてもらうとか、談合をして仕事を分け与えてもらうといった不誠実な仕事も社員のモチベーション低下につながります。

 

自分の仕事に自由やおもしろさを感じられなければ、人は絶望していくのです。

 

あなたの会社の社員は絶望していませんか?
あなたは、社員に誠実に対応していますか?

 

社員が会社を辞める理由はいろいろあるでしょう。「去る者追わず」という考え方も理解できます。ただその原因が社長自身にあることを突き詰めて考えてみることも大切です。

 

社員が辞める構造があなたの会社にあるからです。

奥富 宏幸
\この記事を書いた人/ リーダーシップ&キャリアデザイナー

奥富 宏幸 - Hiroyuki Okutomi -