コラムコラム

課題を解体していく

2022.04.21

先日、ある経営者の方と話す機会がありました。

 

その方が、コロナ禍で浮き彫りになった課題について相談されました。こんな内容のものでした。

 

  • リモートワークの推進が必須な時代に 会社は業績を上げられる人材をどうやって育成するか?
  • リモートワークの中で個人のスキルアップとは、そもそも何なのか?また、先輩にすぐに教えてもらったり、日々の付き合いの中で教えてもらうことができなくなって、どうやってスキルを磨くか?
  • 複数の企業の仕事を同時にすることが増える(副業その他)中で、個人としてはどんなキャリアプランを持つべきか?
  • リモートワークや副業が増えていく中で、個人としては成長をどのように感じ取れば良いのか?
    (結果がでなくて上司や先輩から「いやいやよくやった方だよ」などという声かけが少なくなる中で)
  • 業績が下がり、明らかに給与が下がっている中で、会社は社員にモチベーションをどうやって与えるのか?
    この会社に所属して自己成長を遂げようという意欲をどのように提供するのか?

 

それぞれの質問について、私がお伝えした話の要旨をまとめてみます。

 

◎リモートワークが進む中で業績を上げられる人材育成

 

業種によって、リモートワークができるものとできないものがあります。

例えば、昔からある法人営業で直行直帰するような人というのは、リモートワークをしているようなものです。私が依然やっていた外資系の経営コンサルタントも場所時間を問わずに資料作成や会議をしていましたので、コロナ前からリモートワークの働き方をしていたことになります。

 

現在は、「リモートワークをする選択肢しかない」という点で特殊な状況ではありますが、業績を上げられる人材をどうやって育成するか、いくつかのアプローチがあります。

 

まずは、経営者自身が成長することです。

社会を変える強い信念を持つこと、自己否定と挑戦を繰り返すこと、自分の経営哲学(世界観)を自分の言葉で語り、その世界観を形にできうるリーダー数名を育てることです。

 

リーダーの力が不足していれば、その下で働く社員をいくら育てても組織として結果を出すことは難しい。

 

次に、会社の業績が上がってしまうような環境(構造)づくりが、必要となります。

 

変化の早い市場環境の中で、社員の入れ替わりも一層激しくなることも考えると、採用した社員の人材育成に力を入れることも重要ですが、その時々に働いている社員が業績を上げられるような環境づくりを考えていくことも重要なことです。

 

例えば、他の会社が面倒と思うことや、手間暇がかかることを、ある程度システム化していくなどしてです。会社の真の強みを発掘し、社内外に継続的に伝えることができるような仕組みづくりを考えていかなければなりません。

 

また、別の視点としては、若手に任せる機会を増やすことです。若者の方がITやネットに詳しい。年齢は関係なくなる。何年在籍しているかではなく、何ができるか?リーダーがリスクを許容し、業績への貢献を評価してあげる。

 

仕事以外のコミュニ―ケーションをする時間を確保することも大切です。

オンライン上では、話が仕事のことばかりになりがちで、義務化された空間になりやすい。息抜きできる時間や業務から外れた話をする時間をつくることで、仕事にも遊びが生まれ、それが創造性や組織としての一体感にもつながります。

 

オンラインの教育システムを発展させることも考えられます。e-learning主としながらも、リアル体験も織り交ぜ、いつでも、どこでも、誰でも参加できる環境を整える。海外も含めてた大学や企業が提供する様々な分野のe-leaningを学ばせることも可能です。ビジネス分野だけでなく、IT、生物学、哲学、デザイン、心理学などの分野を学び、仕事に応用する思考力を身につけさせる必要があります。

 

人材育成と評価システムはセットで考えないといけません。定期報告、相談体制の構築です。結果だけでなくプロセスを評価するしくみをつくる必要があります。

 

大企業では、他社といっしょに不足する人材を共有することも検討していくべきでしょう。販売員などはよりシェアされていくかもしれません。

 

少し時間はかかりますが、高校、大学時代からの教育も重要です。答えのない問題に対してどう対処するか?そもそもどんな問いを立てるのか?を学生時代から学ばなければいけません。それが多様性への理解や自分の頭で考え、成長していくために必要なことだからです。転職が当たり前になるこれからの時代で、入社してからトレーニングするのでは、費用対効果が低すぎます。

 

◎リモートワークの中での個人のスキルアップとは?どうやってスキルを磨くか?

 

基礎的な知識や資料作成・コミュニケーションのスキルは、e-learningなどでも学べます。

 

重要なことは、一つ一つの仕事にどんな価値を見出し、不足している点を発見し、次の仕事のために工夫をし新たな方法を試してみること。

 

スキルとは誰かに教わるだけでは応用が利きません。自分の武器として腹の底まで腑に落ちている、他の人に分かりやすく教えることができる能力が必要になります。

 

リモートワークが進むと、仕事が分業化、専業化していくので、基本的な知識や能力は他人に委託してもらったほうが、会社としての生産性も上がります。外部から与えられた知識や技術は、スキルとは呼べなくなります。ロボットやコンピューターで代用できるものも増えてくるでしょう。

 

例えば、TOEIC700点をとることや、パワーポイントの資料作成術を学ぶことだけでは意味がない。何が作れるのか、どんな成果を生み出すことができるのか、スキルはそれを支えるための手段でしかないのです。

 

スキルを磨くことが目的化しないよう、自分が世の中に伝えていきたい価値や目指したい働き方・生き方を考えていくこともスキルアップにつながります。

 

これからは、

  • 情報編集力
    (必要な情報をネットや人脈を通して収集し、自分の考えとして昇華させる力)
  • プロジェクトマネジメント
    (自主的に必要なタスクを洗い出し、他社を巻き込みながら仕事を完成させる能力)
  • タイムマネジメント
    (会社外だと自由な時間や家庭との境目が難しいこともあり、会社と違い時間内に多くの成果を出すための工夫が必要)

 

が必要。情報化社会だからこそ、人脈と信用が大事になる。

 

◎副業、複業が増える中でのキャリアプラン

 

目の前の仕事で圧倒的な結果を出すことに集中する。

 

メジャーとマイナー、本業で出来ないことを他の仕事で補完する(給料、スキル、人脈・・・)

 

個人で働くことが多くなり、上司の存在感が薄れる中で、仕事の進め方やメンタル面で定期的にフィードバックをもらい、前進するための支えになる存在が必要。メンターやコーチの必要性が高まる。

 

これからは、企業が用意してくれるキャリアではなく、自分自身でキャリアを設計していかなければならない。働く会社自体も存続するかも分からないという意識を持って、どこの会社でも通用するような、スキルと考え方を習得していかなければならない。

 

世の中の流れに乗るのも一つだが、逆張りで、時代とは逆行するようなキャリアも、少し時間が経つとその希少性が認められることもある。肝心なことは、仕事に自分を寄せるのではなく、自分に仕事を寄せていくような働き方・生き方を追求していくこと。そうすれば、おのずと必要なキャリアプランも見えてくる。マラソン型、短距離走型、トライアスロン型、借り物競争型、・・・

 

◎成長を実感するには?

 

売上やお客からの評価は分かりやすいものだが、その類の要因だけ追い求めると、いずれ閉そく感を感じる。

 

一年前の自分と比較すること、より難しい仕事にチャレンジすること、変化のある環境を自らつくること。

 

例えば、現状のリモートワークを強いられている状況は、嫌でも変化をしなければならず、振り返ってみると成長を感じているはず。自分のための成長だけでなく、会社やお客の成長が会社の成長がどういうものなのかを言語化し、形にしていくこと。

 

自分で仕事を獲り、売上をつくり、会社や家族のために役立っていると思うことも、立派な成長。

成長するには頭で考えるだけでなく、身体を使って汗をかくことも必要。

 

成長は継続的プロセス・通過点で気づきにくい、成功はある瞬間的な結果で見えやすいが錯覚しやすい。何かをした結果、得られるものが成長。その何かを追求していく。

 

◎業績・給与が下がる中でモチベーションを与えるには?

 

まずは経営者が業績・給与を下げていることを反省しなければならない。経営者としては結果が出せていないことなので、失格である。

 

ただし、業績・給与が下がっているというのは、ある意味、会社を目覚めさせる大きなチャンスでもあります。それは例えば、大病を患って入院している状態。

 

その時、今までの人生を悔いて、どんな意識と行動の変化があるかということ。会社がどん底の状態というのは、離職率も高く、風通しも悪く、悪い空気が蔓延しています。

 

できる社員はどんどん辞めていき、質の悪いお客や仕事に振り回されていることが多い。そういう会社の危機に、力を貸してくれる社員がいれば、その社員には追々しっかり報いてあげなければいけない。

 

また、経営者は、仕事の先にある価値や社会とのつながり、顧客の幸せな状態を言葉にして、社員に徹底的に魔法をかけていかなければならない。社会の中での会社の存在価値、未来展望、個人の成長機会をいろいろな視点から言葉にして、伝えていかなければならない。

 

成長を実感させる環境づくり、成長をできる仲間づくりに精を出さなければならない。

 

***

 

リモートワークが進み、仕事が分業化・専業化していくと、「責任」と「成果」が見えにくくなります。自由に使える時間が増えたように思えるかもしれませんが、人の体温を感じにくく、孤独や寂しさを紛らわすためにネットやゲームに興じる人も増えているように思います。

 

私も以前より、ネットで漫画や将棋、映画を観る事が増えました。

 

 

これからの働き方を考える上で、気になっているのはお笑い芸人の処世術です。

 

実力だけのシビアな世界で、「職業 自分」としてサバイバルしていくのは、コロナ禍のビジネスでの世界にも通じるものがあります。

 

多くの芸人が出版、芸術、歌手、講演業、テレビ出演、YouTuberなどに手を出しているのは、食うのに困ってどうしようもない場合もあれば、世の中の構造を見切って、自分のポジションを自由自在に変えている場合もあるからだと思います。

 

 

まずは、本業に近い領域や負荷が少ない仕事を始め(副業)、

お客からの評価や報酬が増えることで本業・副業の境目がなくなり(複業)、

さらに努力を重ねることで、仕事を通して人も自分も幸せになれることをいくつも行う(福業)になるのではないでしょうか。

 

副業→複業→福業の進化系です。

 

 

あなたは、今、ビジネスでどんな課題をお持ちですか?

その課題をどう捉え、どんな風に対応していくつもりでしょうか?

 

どんな課題があるにせよ、ポイントは、選択肢、判断軸、決断力を持つことです。それが、課題を自分に寄せていくということだと思います。課題を丁寧に編集・解体していく過程で、答えが自然と見つかることがあります。

 

 

奥富 宏幸
\この記事を書いた人/ リーダーシップ&キャリアデザイナー

奥富 宏幸 - Hiroyuki Okutomi -