コラム
2021.08.26
東京パラリンピックが開幕しました。いろいろな意見はありますが、パラアスリートのパフォーマンスをしっかりと心に刻もうと思います。
コロナ禍で社会の閉塞感が高まる中で、自分とは違うモノを「異物」と捉え、差別や偏見の眼差しを向けることが増えているように思います。そう考えると、住みやすい世の中になっているのでしょうか?住みにくい世の中になっているでしょうか?
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最近、会社で70歳まで働いたパートの社員が退職しました。いくつかの事情で急に決まったので、悲しい気持ちと感謝の気持ちでいっぱいです。
社員を採用する時も労力を使いますが、退職する時の方が気持ちが入ります。それは会社のために苦楽を共にしてくれた同志だからです。そのシニア社員はスピードや体力は若者に劣りますが、今まで培ってきた経験から細かい所に目が届き、仕事へ向かう姿勢においても、社員に何かを残してくれたと思います。
あなたは70歳という年齢を想像できますか?仕事をしているでしょうか?もしそうなら、どんな仕事をしているでしょうか?
シニア社員の働きぶりを見ることは、自分自身の「未来」を垣間見ることと同じです。自分が70歳になった時に、若手社員からどんな言葉をもらうでしょうか?逆に、若手社員にどんな言葉をかけてあげたいでしょうか?
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冒頭のパラリンピックの話でないですが、社会にも会社も同じような、似たような考えの人ばかりいては成長も変化も難しくなります。「同調圧力」や「恐怖政治」が働くと、世の中の思想はより均質化され、時に歪曲化していきます。ヒトラーが率いたドイツや現在の北朝鮮を想像してみて下さい。独裁政権が国民の思想や行動を抑え込んだ結果、どうなるかを。
ですから、会社には異質な存在、つまり「ノイズ」を常に入れておく必要があります。
保守的な社風の会社なら、外資系で活躍した若手人材を入れてみるとか、ITに遅れている会社なら、思い切ってITに詳しい学生を採用してみるとか。シニア社員、障害者、外国人、若者などは「ノイズ」の好例です。もちろん「ノイズ」を入れる場合は、組織に軋轢や刺激が加わるので、経営者が、きちんと環境を整える覚悟が必要です。プロジェクトベースで「ノイズ」となる人材と古参社員を組み合わせてもよいでしょう。
「ノイズ」は、会社に違和感や時には不満を生むかもしれませんが、それらが社員が何かを考え、会社のイノベーションのきっかけにもなるかもしれません。自分と違うものを受け入れ、共に成果を出していくことを実感してはじめて、
お客の声や社会の変化を真正面から受け止めることになると思います。
会社も社会も本来は、「ノイズ」だらけのはずだからです。
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「ノイズ」は、「余白」とも言い換えられます。
社会が良い方向に進むには、「余白」が必要になります。「余白」の例としては、「挑戦の機会」「思考の余地」
「他者への配慮」「資源の再活用」などもあるでしょう。「余白」は「無駄」と同一ではありません。それを勘違いしている人が多いのが事実です。
「ノイズ」や「余白」は、私たちの気遣いから生まれます。その気遣いは、相手への関心から生まれます。気遣いななければギスギスした世の中になります。今はそういう風潮になっていますが、それは社会に「のりしろ」がないからだと思います。
その「のりしろ」は、私たち一人ひとりの「のびしろ」にもなるのです。