コラムコラム

どんな状況であっても、リーダーがやるべきこと

2021.03.18

ミャンマーのデモで多くの死者が出ています。本当に悲しい出来事ですね。デモに対する厳しい弾圧は各国で起こっています。日本でも「自粛警察」「ネット炎上」「ネットいじめ」など、異端児や弱者等に対する集中砲火は目に余るものがあります。

 

弾圧する側も、相手側の「自由への挑戦」に加わってみたい、という欲求は少なからずあるものの、体制やルールによる制約や、失敗する事へのリスクを飲み込んで、攻撃しているのでしょう。自分で自分を殴っているようなものです。

 

これらの現象は、コロナ禍で仕事も生活もままならない人たちの不安や嫉妬からくるものもありますが、もう少し大きな視点から見れば、一つの時代が終わるかどうかの分岐点にあるということだと思います。今までは、中国やアジア・アフリカに市場開拓の余地があったので、効率やスピードを重視する資本主義経済が何とか回っていましたが、コロナでついにその「支配ゲーム」にも終わりが見えたということです。

 

それでも、

 

「世界のトップ62人の大富豪が、全人類の下位半分、すなわち36億人と同額の資産を持っている」

 

という事実があります。

 

 

そんな中で、最近思うことがあります。

 

「自分が生きている間にやるべきことって何だろう?」

 

または、

 

「世界は自分に何をさせてほしいのだろう?」

 

 

別に刹那的に生きるとか、悲壮感を持っているとかではなく、純粋に時間の使い方と、本当にやるべきことって何なのかと思うようになりました。昇進、役職、給料などについて悩むことは、世界や日本で起きている問題から見るとどんな意味があるのでしょうか?

 

 

あなたはいかがですか?ご自身の働き方や生き方への考え方について、最近大きな変化はありますか?

 

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昨年から新型コロナウイルスで世界が大混乱しています。世界のどこかで起こっていることは、決して他人事ではありません。明日は自分の身に何が起こるか分からない、そういう気持ちを強く持って生きる時代になったのだと思います。

 

なかなか先行きが見えず、経営者やリーダーの方は辛い状況にあると思いますが、「今」どんなことをしているでしょうか?目の前の問題に取り組むことで精一杯でしょうか?

 

そんな中でも、このコロナ禍で会社がやるべきことを明確にし、淡々と行動している方は、来年、再来年に他社と大きな差をつけることになると思います。

 

先行きが見えないからと言って、経営判断を先送りにしたり、社員へのリクエストが曖昧にしたりする方もいらっしゃいます。気持ちは分かりますが、こんな時だからこそ、自ら旗を立て、それに向かって進むためのマインドと仕組みづくりが必要になります。

 

*

 

世界は「言葉」で出来ています。商品も会社も、すべて「言葉」で出来ています。厳密には「言葉」で表現できないもの(美学の対象)もありますが、人が何かを理解するには「言葉」の力が物を言うのです。

 

 

その文脈で言えば、どんなに大変な状況であっても、
経営者がやるべきことがあります。

 

それは社員とお客様に対してあなたが目指す世界観を言語化することです。

 

あなたがどんな会社をつくりたいか、どんな社会になったらよいかについて、あなたの言葉で何度も何度も伝えていくことです。

 

家族であってもお互いのことを完全に理解することなど無理なわけですから、社員やお客様には、いろいろな視点であなたが伝えたいことをメッセージとして送らなければいけません。

 

あなたが伝えたいことの1%でも相手に伝わってくれればいい・・・ そのくらいの気持ちでいないと、「なんで分かってくれないんだ!」とストレスをためるかもしれません。相手に伝わることは難しくても、少しでも伝わるように丁寧に誠実に言葉を紡ぐのが「送り手」の礼儀なのではないでしょうか?

 

*

 

私はちょうど10年前に家業へ戻ってきました。営業、マーケティング、人事、総務などいろいろな仕事をしていますが、2010年からやっていることが二つあります。社員向けの社内報と、社外向けのニュースレターの発行です。

 

この媒体に、私が考えていることを言語化して伝えているわけです。社内報は毎月、ニュースレターは年4回発行していますので、それぞれ122回と43回の記事を書いてきたことになります。文字数ですと、どちらも2,000字くらいのボリュームです。それ以外に、私はメルマガやコラムなども定期的に書いています。

 

社員やお客様からの反応や反響はごくわずかしかありませんが、相手に何かしらの言葉が響き、行動につながるのであればそれに越したことはありません。もし相手に何も響かないのであれば、それは私の書く内容に落ち度があるのではないかと考えています。

 

社内報には、前月の営業実績など「数字」も入れていますが、なるべく社員の視座が高まるような記事を書くように心がけています。世の中の動き、仕事の意義や、会社の利益構造、偉人の言葉、お客からの声、チームワーク、面白い会社の取組み、などを抽象化して、書きます。具体的なことはイメージしやすいですが、目の前のことばかりに意識が行きがちになります。ですので、社員が10m先を見て仕事をしているようなら、経営者は100m、1km、時には1光年先の世界を語らなければいけません。

 

*

 

先日、社内報を読んだ年配社員が記事について、初めて私に声をかけてきました。普段は仕事内容以外では、ほとんど会話をしない彼が、「毎回読んでいるけど、感心するなぁ~。全部‎自分で考えてるの??○○の記事を読んで、感動したよっ!オレも××については、こう思うよ。」

 

その一言で、私の仕事は報われました。彼の中に「何か」が生まれた瞬間だと思います。楽しそうに言葉が溢れでていました。

 

 

リーダーがどんな状況でもやるべきことは答えを与えることではありません。社員の頭の中に「問い」をつくることです。人生を前に押すための「彩り豊かな問い」をつくることです。問いが生まれれば、新しい世界が生まれ、新しい景色が見えるようになります。

 

あなたは、社員やお客にどんな言葉を贈っていますか?

奥富 宏幸
\この記事を書いた人/ リーダーシップ&キャリアデザイナー

奥富 宏幸 - Hiroyuki Okutomi -