コラム
2020.10.08
新型コロナウイルスの感染拡大が社会や経済に大きな影響を与えています。
非常事態への初動、危機意識の共有、リスクへの向き合い方、情報管理という視点で見ると、政府の対応は会社にも通じるものがあると思います。先日の東京証券取引所のシステム障害は、大きな教訓になったのではないでしょうか?皆さんの会社での危機管理は十分でしょうか?
先日、ある会計事務所の経営者の方から相談を受けました。
顧問料を頂いて毎月、取引先企業をまわっているのですが、決算書類を見せながら、アドバイスをしているとのこと。ただ、最近は取引先が減少しているらしいのです。
その会計事務所は、長い間地域密着でやってこられて、顧客の数も順調に増えていきました。しかし、経営者の代替わりが始まり、若い経営者たちは、会計事務所に求めるものも変わってきているのです。
10年くらい前までは、会計事務所、税理士事務所と言えば、弁護士と同じように「先生」と言われていました。試算表・決算書作成のほかに、税制面のアドバイスや確定申告・年末調整の業務を請け負うことで、会社の価値が評価されていました。
試算表の数字を見ながら、
「売上が前年比○○%増えています。」
「粗利が今月は低いですね。」
「今のまま行けば今期の純利益は○○円くらいでしょう。」
そんなアドバイスを社長は素直に聞いてくれていました。
そもそも、数字を読み込めない社長もたくさんいますが、決算書の数字に一喜一憂しているような二流社長は少なくなっているのが現実です。厳しい言い方ですが、自然と淘汰されているとも言えます。
当然、会計事務所に求める価値も変わってきています。顧問契約による税務・会計・確定申告業務だけではなく、相続、コンサルティング、システム化支援など・・・ ビジネスモデルも大きく変わりつつあり、クラウド会計ソフトfreeeを使う中小企業が増えているのは、ほんの一例です。会計事務所の存在意義についてはここでは話しませんが、3~5年後には中小企業向けの会計事務所も大きな変化が間違いなく起こると思います。
二流社長は、現場の変化にも敏感です。過敏と言った方が良いかもしれません。社員の動き、顧客の動きに目を配り、社長自ら現場で汗をかいています。しかし、それでも世の中の変化の激しい今日では、十分ではありません。要は、自分を起点に物事を見ているだけでは視野狭窄になってしまいます。
経営者目線の言葉はどれだけ取り繕っても、顧客に必ず見抜かれます。経営者が「オレの背中を見ろ」と無言で語り抱えても、社員はついてこないでしょう。
一方で、結果を出す一流社長は、社会の構造の変化を読みとろうとします。
今回の新型コロナウイルスに限らず、今後も自然災害や環境問題、貿易摩擦などにより会社経営に大きな影響を与える緊急事態が起こりえます。
そういった緊急事態に備えて、
といったことは大切ですが、これも守りの対策に過ぎません。
一流社長や真のリーダーは、大きな視点で市場や社会の変化を見て、持続的に成長できる方法を常に考えています。物事を構造的に俯瞰し、抽象的に思考し、全体最適に向けた主観的な価値観に基づいて行動しています。
最近は、行く先々でコロナウイルスの影響で会社経営が厳しいという話を聞きますが、いくら現状を悲観し、嘆いていても、状況は一向に変わりません。現在は、「モノと情報が不足し、人の行き来が制限される。」事象が見受けられますが、例えば、こんなことを考えてみる必要があります。
目の前に起こった表面的な事象を見るのではなく、その裏側、見えない部分に目を向けて、物事の本質を巨視的にとらえる。
つまり、
物事の観察→論理の反転→新しい打ち手
のサイクルを必死に考え抜いた経営者だけが一歩先を進むことができるのです。
この厳しい難局も、思考と仕組みをアップデートしていくことで、乗り切ってしまいましょう。