コラム
2020.08.03
映画監督の黒澤明さんは、彼の死後に発見された47冊の創作ノートの1冊に、こんなことを書いていたそうです。
「小さな完成よりも大きな完成を」でもなく、「大きな完成よりも小さな完成を」でもありません。「完成」とした時点で、その仕事の命が消えていきます。仕事はあなたと誰かとでつくりあげていくものですから。
私は、黒澤監督は、「完璧主義」「完全主義」の人だと思っていましたが、もしかしたら、より良いものを目指すことを追及する「ベター主義」の人であったのかもしれません。
「完璧主義」「完全主義」だと、どこから見ても100%と思えるものを作らなければならず、時に出来上がったものが小さなものであったり、つまらないものになりがちです。そう、それは減点法の発想。
一方、「大きな未完成」という言葉には、前や上に向かって変化していくという、意志の強さ、エネルギーの動きを感じます。加点法の発想です。
黒澤監督の言葉をこんな風に加筆してみました。
「小さな完成よりも大きな未完成を。人生は”未完成”という映画をつくること。」