コラムコラム

会社が遺すべきものとは?

2022.03.18

一昨日発生した地震は驚きましたね。あなたがお住まいの地域は大丈夫でしたか?大きな被害にならないことを祈るばかりです。

 

今回のロシアによる戦争もそうですが、地震や自然災害でも、長年人々に大切にされてきた建造物や自然があっという間に破壊されるのを見ると、無力感を覚えてしまいます。プーチンは兄弟であるウクライナを攻撃しています。国内世論の引き締めや、海外諸国からの反発に躍起になっていますが、結果的にはロシア、さらにはプーチン自身を破壊していることになるのだと思います。

 

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戦争と言えば、今古市憲寿さんの「誰も戦争を教えられない」を読んでいます。

 

広島、パールハーバー、南京、アウシュビッツ・・・

世界中に存在する戦争博物館と平和博物館を巡りながら、戦争に対する歴史観について考えています。博物館というメディアを通して、国と国民が戦争をどう扱うかを観ていくのは面白い視点です。アメリカや中国のように戦勝国として
派手に戦争を演出する国もあれば、アウシュビッツのように当時の実物・真実だけをなるべく遺すことに専念し、その「状態」を維持するためには投資を惜しまない国もあります。

 

日本が国として公式の戦争博物館を持たなかったのは、未だ戦争を自分事として処理できていない現れなのかもしれません。「戦争を知らない」理由はそこにあるのではないでしょうか?

 

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新型コロナウイルスの感染拡大~今回のロシアの戦争の流れを俯瞰して見ると、「遺す」ということについて
よくよく考えるようになりました。一瞬のうちに命や建造物や自然を失うことが現実的になる中で、何を遺していくかです。

 

 

会社であれば、何を遺していく必要があるのでしょう?

 

 

付加価値のある商品やサービスでしょうか?

ユニークな技術や儲ける仕組みでしょうか?

顧客の心に寄り添うことができる社員でしょうか?

 

 

会社というのは、社長も社員も時間が経てば入れ替わり、不況や新しい脅威に晒されれば倒産することもあります。そんな不確実な存在である会社が遺していくべきものって何なのでしょう?

 

 

 

そのヒントは世界遺産にあると思いました。

 

日本ユネスコ協会連盟は、世界遺産を次のように定義しています。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
世界遺産とは、地球の生成と人類の歴史によって生み出され、過去から現在へと引き継がれてきたかけがえのない宝物です。現在を生きる世界中の人びとが過去から引継ぎ、未来へと伝えていかなければならない人類共通の遺産です。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

世界遺産の登録要件を見ると、

 

(i)
人間の創造的才能を表す傑作である。

 

(ii)
建築、科学技術、記念碑、都市計画、景観設計の発展に重要な影響を与えた、ある期間にわたる価値観の交流又はある文化圏内での価値観の交流を示すものである。

 

(iii)
現存するか消滅しているかにかかわらず、ある文化的伝統又は文明の存在を伝承する物証として無二の存在(少なくとも希有な存在)である。

 

(iv)
歴史上の重要な段階を物語る建築物、その集合体、科学技術の集合体、あるいは景観を代表する顕著な見本である。

 

(v)
あるひとつの文化(または複数の文化)を特徴づけるような伝統的居住形態若しくは陸上・海上の土地利用形態を代表する顕著な見本である。又は、人類と環境とのふれあいを代表する顕著な見本である(特に不可逆的な変化によりその存続が危ぶまれているもの)

 

(vi)
顕著な普遍的価値を有する出来事(行事)、生きた伝統、思想、信仰、芸術的作品、あるいは文学的作品と直接または実質的関連がある(この基準は他の基準とあわせて用いられることが望ましい)。

 

(vii)
最上級の自然現象、又は、類まれな自然美・美的価値を有する地域を包含する。

 

とあります。

 

これらは、会社が後世に遺すものとしても考えられるのではないでしょうか?

 

  • 類い希な創造性
  • 価値観の交流
  • 文化・文明の存在の証
  • 人と自然との触れ合い
  • 顕著な普遍的価値
  • 最上級の美

 

これらを、会社という器を通して、社会にどんな風に差し出していくのかが問われているのだと思います。経営者の仕事はそれに尽きます。

 

 

*

 

「会社は何を遺すべきか?」

 

という問いは、

 

「遺すべき会社はどういうものか?」

 

とに置き換えて考えてみると新たな気づきがあります。

 

 

これからの時代は、一つの会社が優れたサービスを独占するようなものではなく、社会がその会社の存在を必要とするような構造をつくっていく必要があるのではないでしょうか?

 

「少し頼りないところもあるけど、その会社がないと困る」

「いざという時に、あの会社に任せれば安心」

「あの会社を見ていると元気や勇気をもらえる」

 

そんな風に思ってもらえる会社が増えることが、結果的に良い社会を維持できることにつながるのだと思います。

 

 

「そんなの理想論だ。」と思うでしょうか?

 

しかし、長年愛され続ける会社の多くは、理想論を語って、その理想を具現化することに力を注いできた会社ではないでしょうか?

 

Apple
スターバックス
街のパン屋

 

大きな会社であるとか小さな会社であるとかはあまり意味を持ちません。ウクライナのゼレンスキー大統領がアメリカ上下院議会に向けた演説を聞いて、そんなことを思いました。力に任せた強制、弾圧、支配では、国は存在しても、国民の心は消失するだけなのです。

 

 

会社も同じです。

奥富 宏幸
\この記事を書いた人/ リーダーシップ&キャリアデザイナー

奥富 宏幸 - Hiroyuki Okutomi -