コラムコラム

「企業は人なり」の意味

2020.07.14

「企業は人なり。」

 

この言葉を実感しない人はいないでしょう。

 

伊勢丹でも、スタバでも、トヨタでも、町工場でも、どんな会社であっても、人がいっしょに働き、何かしらの価値を生み出しています。最近は、コンビニや飲食店で働く外国人の姿もよく見かけるようになりましたし、いっしょに働く人の国籍も多種多様になってきました。

 

「企業は人なり。」

 

この言葉を経営者の視点と社員の視点で考えると、その言葉の意味合いは大きく変わってきます。企業は、経営者と社員の集合体ですが、それぞれに求められる役割と、それぞれが求めている価値観は異なります。

 

つまり、見える景色が違うのです。
東京スカイツリーの展望台から見える景色と家のベランダから見える景色が違うように。

 

私は、会社員としてキャリアを始め、従業員が20人ほどの中小企業から、世界中に支社を持つ市場調査会社やコンサルティング会社で
働いた経験があります。サラリーマン時代は、自分の仕事内容や会社での役割や責任、給与に関心を持ってきましたが、現在は会社を経営する側にいるので、どんな環境であれば人はやりがいを感じるのか、人は育つのか、そして何のために働くのか、そんなことを考えるようになりました。

 

現在は、中小企業の経営者、オーナー企業の後継者の方と話をすることが多いですが、自分の幸せを犠牲にして会社のことばかり考えている人が多いと感じます。特に私の親世代の社長の皆さんは、戦後に裸一貫で会社を興して身を粉にして働いてきた方が多いので、お金とモノに対する所有欲・支配欲が強く、時には社員までも所有物と考えるような言動をとる方がいます。

 

しかし、そういう会社の経営状況はなかなか厳しいものがあります。翻って、どんな会社であれば、社長も社員も会社もハッピーになるのでしょうか?

それは、組織の成長(成熟)と個人の成長(自己実現)の両立にチャレンジしている会社です。

 

経営者はどちらかと言えば、【組織の成長】>【個人の成長】になる傾向があるでしょう。会社を存続させるために、経営者は売上、シェア、企業価値、社会的信用、雇用拡大などを向上させることを考えます。

 

一方、社員は、【組織の成長】<【個人の成長】という関係性になると思います。給料、役割、責任、仲間、健康、プライベートへの影響といったものを会社の中で働くという行為を通して、追求していきます。

 

そういった両者の価値観の違いを認識した上で、会社が、個人が、持続的に成長し、生き生きと、幸せになるためには、会社の成長と個人の成長を近づけていかなければなりませんが、そのためには何が必要なのでしょう?

 

ぜひ、時間をとって考えてみてください。

 

経営者は孤独であり、人生の大部分を会社経営に注力するかもしれませんが、経営者ご自身が幸せと成長を感じないで、社員や会社の成長はあり得ません。

 

成長している企業には、良い人材が集まると言う人がいますが、これは順番が逆です。

 

良い人材がいるから企業は成長しているのです。良い人材を集めるために、企業の仕組みや制度を変える前に、経営者自身が良い人を目指していかなければなりません。自分自身を常に成長させ、社会に貢献していくための信念や根拠を自分の言葉で表現していくことが出発点になります。

 

「企業は人なり」の真意は、経営者が企業の生みの親であるということを忘れてはいけないのです。

奥富 宏幸
\この記事を書いた人/ リーダーシップ&キャリアデザイナー

奥富 宏幸 - Hiroyuki Okutomi -